ハンコ代
一遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書に印鑑を押してもらい、印鑑証明書を発行してもらうために代価として支払うお金をハンコ代と呼びます。慣習的なものですが、これを遺産分割協議書に記載する際、ハンコ代と記載するかそれ以外で記載するかにより贈与ととられるかどうかが分かれます。
なお、記載しなければ記載しないで、後日支払いの事実があったことを税務署が確認した場合には脱税行為となりますのでご注意ください。
尊厳死を日本では選ぶことができないのですか?
苦しみながら、死を迎えたくはないが、日本には尊厳死ができないからなとお考えの方も多いのではないでしょうか?ところが、延命治療をしないという意味合いでの尊厳死は実をいうとできるのです。
「尊厳死宣言公正証書」というものを作っておけば、延命治療が必要になった場合に、本人の意思確認ができなくても、公正証書をもとに延命治療をやめることができるのです。
正直、延命治療は見ている側も非常に苦しいもので家族も苦しみ、深く心が消耗されます。家族のために一つの方法として、お考えになられるのも手だと思います。
長年あっていない親族に死亡の事実は知らせるべき?
葬儀の際以外と問題になるのがここです。例えば長年会っていない、前妻の子・勘当した子供などがよくあるケースです。長年会っていないと連絡するのが億劫になりがちですが、なるべく早めに知らせてあげてください、居場所が分からないのならば、行政書士に相続人調査をお願いして早めに連絡をつけるべきです。もちろん相手が死んだ方を憎んでいたとしてもです。
遺産の分割や名義変更、預金の引き出しには相続人全ての印鑑が必要です。連絡をくれなかった、親の死に目にも会えなかった、何をいまさらということで遺恨を残して、あとあと印鑑を押してもらえないということが無いように早めに連絡をしましょう。
※一部、公正証書遺言で一切の連絡をすることなく相続手続きができる場合もありますが、ごくまれです。
遺産分割協議書と相続分皆無証明(相続分の無いことの証明書)にご注意を!
親族が亡くなられた際に、遺産分割協議書もしくは相続分皆無証明書が郵便で送られてきて、印鑑を押して次の人にまわしてください。相続にはよくある光景ですが、よほど信頼できて意思疎通のできている相手以外の場合には絶対にやらないでください。実際にトラブルも多いです。
上記のような行動を取った方に聞くと「財産は放棄しました」とおっしゃる方が多いのですが、いえいえ放棄していませんよ。負の財産(つまり借金などです)は相続してしまってるんです。
遺産分割協議書と相続分皆無証明はあくまで相続人間の決め事であり、債権者は法律で定められた相続分に応じた割合で借金を返してくださいと主張ができるのです。
たった20万円の預貯金だったからくれてあげたよと気持ちよくなった後に500万円の督促状が届く、実際にあるお話です。
相続した不動産と自動車の名義変更は共有でいいですか?
名義変更費用を節約しようと思って役所に相談すると、相続の場合は100%共有で説明されます。役所は手続きのやり方は知っていても、相続のプロではありません。とりあえず、亡くなった方のところから円満に名義を移すために共有で説明しているにすぎません。
共有にするとどんなことが起こるか?その対象物に対する売却には全員の同意が必要ですし、管理行為(共有物を貸し出したり、貸し出しを止める等)をするためには多数決を取る必要があります。
例えば、自動車があって壊れてしまったので自動車税がかかるので手放したいという場合でも、全員の同意が必要なので、一人が「父の思い入れのある自動車だから」ということで売却を拒めば全員でその後も自動車税を払い続けないとですし、アパートに騒音を出す厄介な人が借り手として住んでしまった場合でも、一人が「あいつは友達だから分かるけどそんなやつじゃない」と主張した場合にはどうすることもできません。
共有への名義変更は最終的な話し合いを、名義変更のときにしないだけで、結局最後は話し合いが必要になるのです。問題の先送りは傷を大きくすることもあるので気をつけましょう。
私は親の面倒をこれだけ見たのに・・・
相続でよくあるのがこの言葉です。「私は親の面倒をこれだけ見たのに・・・」の裏には、「これだけ面倒を見たんだから、もっと相続できる分があってもいいのに」という言葉が隠れているのですが、この隠れている主張の部分を「寄与分」といいます。
この主張をもとに「寄与分を主張するぞ」と息巻く方が多いのですが、寄与分を主張するためのハードルは意外と高いです。ハードルは@夫婦間の協力扶助義務A直系血族および兄弟姉妹の扶養義務B直系血族および同居の親族の相互助け合いの義務です。これら3つは民法の規定なのですが、民法の規定では家族なんだからお互いに助け合って当たり前、面倒を見るのが当たり前なんですね。
例えば、療養看護をしてあげた場合、これを主張しても、介護保険における要介護度2以上の状態にある人を看護していなければ、裁判所の判断は「大変でしたね」の一言で終了です。
また、基本的に相続はもめればもめるほど法律で定められた分割規定に従うようになってます。調停員も仕事の評価はどれだけ和解させたかなので、あいまいな基準である寄与分で話が泥沼に落ちることを嫌いますので「大変だったね。それならそれなりにもらえる分が無いとね」とは絶対に言ってくれません。
どれだけお金がかかってもいいから気持ちが欲しいんだという意気込みで敏腕弁護士を雇える方だけが主張できるのが寄与分なんです。もちろんそれだけお金がかかるので、残るのはお金ではなく気持ちが残ります。